理事長 吉田 博
2025年10月に理事長に選任されました。これまで日本臨床栄養学会を支えてくださった名誉会員の先生方の伝統を引き継ぎ更なる発展に尽力された前理事長の後任として、コロナ禍を過ぎて再び活性化を目指す学会運営に重責を感じております。現在、わが国も含め世界は、栄養不良の二重不可(Double Burden of Malnutrition)、すなわち低栄養(やせ、発育障害、貧血など)と過栄養(肥満、生活習慣病など)が同時に存在する状態にあり、国際的な議論が展開されています。本学会としても、臨床栄養という特長を活かして、臨床的な現場の課題・問題点を抽出して共有し、それを研究に進展させ、その成果を社会に、臨床現場に還元する姿勢で取り組んでまいる所存です。
この数年のなかで本学会では2種類のミネラルに関する栄養ガイドラインの改訂版およびサルコペニア・フレイル栄養管理ガイドラインが発刊され、臨床栄養の学会として特筆すべき成果を創出し続けています。疾患特異的なガイドラインではなく、全般的に健康に資する栄養管理の方策、ライフステージに着目したガイドラインの創出は本学会の重要な活動です。現在は小児栄養部会が活発に活動していますが、加えてライフコースの視座から、栄養関連の部会を新設していくのは本学会にとって骨太の生命線になると思っております。
日本臨床栄養学会は特定の疾患や領域に偏ることなく、臨床現場における栄養問題を広く扱ってきましたが、わが国における臨床栄養学は戦後の食糧不足に際してどのように栄養を効率よく摂るかというところからスタートしました。そして社会経済の復興とともに過食や偏食による健康障害を解決するための栄養学に変わりました。更に近年では高齢化に伴う低栄養とその合併症、さらには若年女性の痩せにともなう健康課題にいかに対応していくかなどのテーマに多様化しつつあります。時代とともに栄養学の重要課題が変遷していきますが、そのなかで変わらないのは、栄養学が人々の健康課題解決のプラットフォームであることです。その担い手がまさしく日本臨床栄養学会であり、そうした基盤となる臨床栄養学を的確に実践するには教育が欠かせません。本学会の使命の一つとして、 医師に対する栄養教育、管理栄養士養成とシステム構築などを中心として活動していく所存です。そのなかで、ナレッジの共有や情報発信のプラットフォームは申すまでもなく学会誌が基本にあります。引き続き皆様と共にある臨床栄養の学術誌として学会誌を発展させたいと思っております。また、前理事長が精力的に取り組んだ病棟管理栄養士の更なる発展・拡充に努めてまいる所存です。
ここにあらためまして、日本臨床栄養学会の活動について会員の皆様のご理解とご支援をお願いする次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
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